誠之堂・清風亭

 (2004年12月更新)

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歴史・名前の由来・概要誠之堂の装飾ステンドグラス

誠之堂の装飾

 

 誠之堂は、小建築ながら、多彩な煉瓦積技法と自由な意匠によって端正かつ雅趣ある建築作品に仕上げられ、大正建築の特質の一面である美術工芸的傾向を代表する作品として、高く評価されています。
 吟味された素材ときめ細かいデザインにより、密度の濃い空間が作り上げられています。

●外観


■小屋根

 屋根は、天然スレート瓦で葺かれています。
 正面の屋根の中央には、小屋根が付けられています。これは、室内からは見えず、明かり採りの機能はありません。
 田辺は、栄一にふさわしい威厳を持たせるため、シンメトリー(左右対称性)を強調する目的で作ったと記しています。

■風見鶏

 誠之堂の外観で、まず目に付くのが、この風見鶏ではないでしょうか。
 鶏は、復元されたものですが、方位板は当初からのものです。文字が、てん書風にデザインされた漢字で示されたユニークなもので、中国風を感じさせます。

■ベランダ

 正面のベランダには、左右にかぎ型のベンチが設けられています。ベンチの背もたれには、東洋趣味風の手摺子が木組みで装飾されています。
 このベンチも左右対称で、小屋根とともに、正面のシンメトリーを強調する効果があります。

■煉瓦壁

煉瓦壁

 外壁には濃淡のある煉瓦を用い、リズミカルに配置することで、装飾性と変化を与えています。また、小口面を1センチほど突き出して積むなど、立体的にも工夫された、多彩な煉瓦積技法が見られます。
 当時、煉瓦タイルによる均質な外壁とすることが通例でしたが、それを田辺は、「いわゆる上等仕事」と呼び、あえて異なった工法を採用しています。

■装飾積み

 暖炉の背後の北側煉瓦煙突部には、赤、黄、黒の3種類の煉瓦を用いた装飾積みで「喜壽(きじゅ)」の文字を表しています。

  なお、解体の際に外壁、基礎の各所から「上敷免製」の刻印のある煉瓦が発見されました。これらの煉瓦は、深谷市内に所在する日本煉瓦製造株式会社で焼かれたものであることが確認されました。

 

●内観


■玄関

 玄関は、白い天井に、柱、梁が外部に表れ、天井周りを飾って、独特の空間を作っています。これは、ハーフティンバーと呼ばれる意匠に似たものです。ハーフティンバーは、昭和初期になってたいへん流行したそうです。
 同じ田辺の設計により、翌年建てられた飛鳥山にある「晩香廬」にも共通して見られます。

■ヴォールト天井とレリーフ

  誠之堂の中心の大広間は、まず、円筒型の漆喰天井(ヴォールト天井)が特徴的です。
 天井には、朝鮮風の雲・鶴の模様の石膏レリーフが配され、それらが「松葉」で縁どられています。また、デザイン化された「寿」の文字も配されています。

 いずれもめでたい意匠で、ここでも栄一の喜寿を祝っています。
 田辺は、雲と鶴は、朝鮮の「雲鶴青磁」の意匠からとったことを記しています。


「雲」


「鶴」


「寿」

■次の間


網代天井(あじろてんじょう)

 次の間の天井は、大広間とは対称的に網代天井で、日本的な数寄屋造りの様式を採り入れています。

 次の間の出窓からも、明るい日差しが差し込みます。

■特注金具

 カーテン周りのレールや窓や戸の金具などは、特注で作られ、当時のものが多く残されています。
 戸のハンドルや錠前は、アメリカの「YALE社」により製造されたものです。よく見ると、製造者「YALE」と発注者の清水組「SHIMIDZU」が刻印され、特注品であることがわかります。
 ある程度まとまった数を特注していたことも推測されますが、製造者と発注者の両方の刻印のある金物は、現在のところ、この事例のみだそうです。
 小さいながら隠れた見どころ、と言えるでしょう。

 

ステンドグラス

化粧の間や大広間の窓のステンドグラスは目を引きます。

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